○○がないた日
 
「イイかい皆。いつもポーカーフェイスで表情が変わらない能面ヤローの手塚を大泣きさせたら勝ちだよ」
「不二ぃ手塚だって表情ちゃんとあるよん。ヒドイなぁ」
「英二!笑った顔見たことある?怒った顔見たことある?泣いた顔だって・・・・イイ?とにかく大泣きさせればハワイ旅行ペアチケット」
ハワイ旅行?
しかもペア?
その言葉に青学レギュラー陣に火がついた。
そう。誰もが菊丸とハワイに行きたいと思っているのだ。
 
 
 
「よーし!まずオレがいくよ」
先陣をきったのは河村。
「英二。二人でワイキキをバーニングしようぜ」
 
「えぇぇ?うん・・・・・何言ってるか分かんないけど・・・・・・」
「本当に何を言ってるのか・・・・・暑さで脳ミソがイカれてるのかもしれないね」
 
 
河村は手塚を呼び出すと自宅に連れていき店のカウンターに座らせた。
「悪いな手塚こんな事を頼んじゃって」
「イヤかまわんで、新作とは?」
「あ、うん。これなんだ」
「軍艦巻き・・・・?」
「食べてみてよ」
コクリと頷き手塚は軍艦巻きを口に運んだ 
ξж△ψ※!!!!」 
手塚の瞳はウルウルしている 
……が、大泣きとは程遠い。
「か、河村コレは不二の為のメニューなのか?だったら不二に直接食べさせた方がイイぞ」
ゲホゲホいいながら手塚はツンときている鼻を摘む。
「手塚泣きたくない?」
「イヤ……泣きなくはないが鼻が痛い」
 
 
 
「何やってんだよあのウドの大木は………ワサビで大泣きするかっての」
鬼悪魔の不二はペッと唾を吐き捨てた。
 
トボトボと皆のところに戻ってきた河村の顔はかなり落ち込んでいた。
「タカさんの脳ミソ自体ワサビなんじゃないの?」
ヒドイ言われようである。
次に名乗り出たのは大石。
「じゃ行ってくるよ英二。二人でバカンスしような」
「あはは何か知らないけど頑張ってね」
菊丸には大石の言葉の意味は通じてなかった。
「あの卵、暑さでゆで卵になったみたいだね。後で卵サラダにしてやる」
ポツリと言った。
 
 
「よお手塚じゃないか。こんなとこで何してるんだ?」
「さっき河村の所で新作を試食したんだが……」
「不味かったんだ」
「不味いと言うより食い物ではないな……」
何気に手塚の言葉にも毒がある。
「ところで手塚ぁこの間の模試。オレが全国1位だったんだ……手塚も頑張ったみたいだけどオレには及ばなかったみたいだな……ァハハ」
「そうか流石だな大石。特に頑張ってはいないが菊丸に付きっきりで勉強を教えてたからな……菊丸の順位はどうだったんだろう」
「え、英二に付きっきりって?」
「ここ最近毎日一緒に勉強をしているんだ」
大石は見た! 
はにかんだ手塚の顔を。
悔しさに泣けてきた。
自分が一人寂しく猛勉強をしている最中手塚は愛しの英二と二人きりでしかも密室で勉強をしていた。それに自分とはほんの一点差で手塚は2位。
大石はその場に崩れ落ちた。
「大丈夫か大石」
「ハハ大丈夫さ。大丈夫だとも」
手塚はそんな大石を放置しその場を後にした。
「悔しがらせようとして自分が悔しくて泣いてるなんて大馬鹿もいいとこ。あんなヤツ放っておいて行こう」
鬼畜・・・・・・・・・・。
「よ~し次はオレ行くッス」
桃城が元気良く立候補。
「英二せんぱぁ~い♡いっちょ行ってくるんで見ててくださいねぇ」
「おう!頑張れよぉ桃チン」
ニッコリ笑って手を振った。
 
 
「手塚部長~探しましたよ」
「桃城?どうしたんだ」
「まぁまぁちょ~っとオレんち来てもらってイイッスか?」
手塚の返事も聞かずグイグイと腕を引っ張り連れて行ってしまった。
「桃は何をするつもりだろうね……さぁボク達も行くよ」
桃城と手塚の後をゾロゾロとついて行く。
「あはは散らかってますけどどーぞ」
「……。桃城少しは掃除したらどうだ」
「ソッスねぇ部長を見習います。てかコレッスよ観ましたか?」
「いや。あまりこういう映画は観ないな」
「んじゃ一緒に観ましょう!!」
「え?あ………桃城オレは」
「まぁまぁ」
桃城に押し切られ映画を観る事2時間。
手塚は興味のない、しかも好きでもない桃城と貴重な2時間を費やした事にグッタリしていた。
「桃城……もう行っても良いか?」
隣でうぉんうぉん泣いている桃城に困り果てる手塚。
「何回見てもイイッス北極物語。部長何で泣けないんスか」
「そうだな……となりで号泣されては」
手塚は深くため息をついた。
桃城の家を出ると待ち構えていたかのように乾が声をかけてきた。
「手塚じゃないか桃城の家で何かあったのか?グッタリしてるようだが」
「ちょっとな……」
「ではこの元気が出るドリンクでも飲んでみないか」
乾の手にはドップリと青紫に茶色がかった液体がペットボトルに入っていた。
ドプドプと紙コップに注ぎ手塚に手渡した。
「結構!遠慮しておく」
「そう言わずに……」
無理やり飲ませようと必死な乾。
「ほぅら飲んで泣いてしまえそうしたら英二とハワイだ」
「え?」
聞き捨てならないことを言っている乾。
とにかく菊丸を探さなくては。そう思った。
「乾あれはなんだ?菊丸じゃないのか?」
「どこだ?」
乾の目を逸らした瞬間手渡された乾汁を道路の隅に投げ捨てた。
「……ドコにもいないじゃないか」
「乾。今回のはなかなか美味だったぞ。ご馳走様、おかげで元気になった」
「え?あれ?そうか……えぇぇそうなのか?」
「ではオレは急ぐからこれで」
そう言うと足早に手塚は去って行った。
「……おかしいな」
乾はペットボトルに残っているソレを一気に飲み干した。
ドクン
ドクン
「アハハ………うわぁぁぁん」
泣きながら笑っている。
 
「い、乾のヤツ何を作ったんだ」
流石の不二もコレには恐怖を覚えた。
「どいつもこいつも役にたたないな」
とため息混じりに言う。挑戦者組の後ろを惨敗組みが続く。
日は西に傾き始めていた。
「フシュ~不二先輩オレが行くッス。菊丸先輩……その」
「うん見てるからねん♡ガンバレ海堂」
菊丸の笑顔が眩しい。それだけで皆号泣できるであろう。
海堂は走って行ってしまった。
「なんか皆必死でおっもしろいねぇ」
「そりゃぁハワイだもん(しかも英二付)皆必死だよ英二も一緒にハワイ行きたいでしょ」
「ハワイかぁ……もっと静かでのんびりできるトコのが好みかもなぁ」
うーんと親指をガジガジしながら首を傾げていた。
そんな姿を見ただけで皆は前かがみになっていた。
 
 
「手塚部長!何してるンスか?」
「え?あぁちょっとな」
まさか菊丸を探しているなんて言えない。
「海堂はランニングか?練習熱心だな」
「ハイ。あ、そうだ部長……今からイイものが始まるンス」
取り出したのは携帯。
「携帯?何を始める気だ」
素早くアンテナを伸ばし携帯画面を横にした。
「……テ、テレビ?」
海堂の突拍子もない行動に目が点になる。
イヤイヤ。こんな所で海堂とテレビを見ている暇はない。早く菊丸に逢いたいのだ。そして〝菊丸とハワイ〝の真相を確かめたい。
「まさか海堂お前も?」
見ると海堂は熱闘甲子園を観て泣いている
「海堂?大丈夫か」
海堂のそんな姿今まで見たことがない為動揺を隠せない。
オロオロしている手塚の耳元で何かが囁いた。
「ココ出るンスよ……ゆ~れ~」
ビクッ!
「ぉぉぉぉ脅かすな越前」
「部長って見たことあります?」
「何をだ」
「霊に決まってるじゃないですか。あ、ほら……部長の」
薄暗い公園。すすり泣く声(海堂)越前は不気味な声で手塚を恐怖へ誘う。
「後ろに女の霊がぁぁぁ」
「越前。怪談話は合宿の時にでもとっておけ」
「あれぇ……怖くても人って泣くんだけどな」
失敗。
「あはは………おチビも海堂もダメだったねぇ。てか不二はどうなの?泣かせられるの?オレでも手塚が泣くの見たくないなぁ。手塚は格好良くいてほしいもん。にゃは♡」
チッ
不二は笑顔も消え目を見開いていた。それを見ている菊丸は不二のその姿の方が楽しくてしかたない様子。
「ワサビと乾汁はどうでも良いけど悔しくもない(レベルが大石だったし)動物にも関心がない…オニめ、感動もないなんて…越前も怖がらせるならもっとこう……」
「不二ぃ心の声がだだもれだよん」
「かくなるうえは……」
不二は走って手塚に近づくや否やジャンプして回し蹴りをくらわした
「わ゛ ―――――っ手塚ぁ」
慌てて菊丸も手塚に駆け寄った。
「ふぅ。やっぱり痛くて泣くのは小学生までか」
「い、いきなり何をするんだ」
地面に抱擁しながら怒りで肩を震わせた。
「大丈夫?手塚」
顔をあげると捜し求めていたエンジェル。菊丸の笑顔。痛さや怒りは写輪眼を使ったごとく吹き飛んだ。
「逢いたかったぞ菊丸」
起き上がり菊丸の頬を両手で包む
「うん。オレも逢いたかったよん」
ニッコリ笑う菊丸
今日の疲れも吹っ飛びそうなそんな笑顔。手塚は皆がいるのを忘れ二人の世界に入り込んでいる。
ゆっくり自分の顔を菊丸に近づけた。
「手塚、別れよう!」
笑顔でショットガンをぶちかます。手塚の心臓に直撃した。
「な、何を言うんだ急に」
手塚以外も流れ弾をくらっているようだった。
「手塚(部長)と菊丸(先輩)が付き合ってたぁ?」
暗闇の公園に男達の鳴き声が響き渡った。
道行くものはあまりの光景に目を逸らす。
一人。
ニコニコと笑顔の人物がいた。
「わ ――――― い♡これでハワイはオレのだー手塚ぁ一緒に行こうね」
手塚は菊丸に振られ滝のように泣いている。
「手塚ぁゴメン嘘だよぉ手塚と別れたりしない。大好きだもん」
そういって手塚の首に手を回すと深く深くキスをした
「ん ――――― ♡夏休みは2人でハワイ行こう大好き手塚一瞬でも嫌な思いさせてゴメンね」
2人のイチャツキぶりを見せられさらに号泣する青学レギュラー陣。
別れ話が嘘だと知って更に泣く手塚。
後、公園で男の号泣として語られる事になる(ウソ)
 
 
 
後日 ―――――。
36組の教室
「結局手塚を泣かすのも笑わせるのも英二にしかできないって事か」
「そうだね」
「英二手塚に飽きたらボクのトコロにおいでね」
「飽きないよぉ」
「でも英二を使って手塚にイロイロできるからボクは楽しみだな」
「………ハハ」
不適に笑いながらハワイ行きのチケットを菊丸に手渡した ―――――。


あとがき
泣く・鳴く・なく(これは下ネタ)
誰をなかすか。。。。
手塚だろ!と思ったのに青学皆泣かせちゃいました。
ハワイ行きのチケットは不二の自腹(笑)
手塚と菊丸がハワイに行った時はきっと
「偶然だね」
とか言いながら邪魔しに行くんだと思います(ノ∀`*)あひゃ

2009.08.01