片想い






ピンポーン

「はぁーいどちら様ですかぁ」

ガチャン

ガコッ

「い゛だっ」

玄関のチャイムを鳴らすと中から返事と共におもいっきりドアが開き顔面を直撃した。

「ぅ゛ぅ゛・・・・あれ?だれもいにゃい」

鼻が潰れると思う位の痛さに耐えながら開いた玄関を見ると目の前には誰もいない。

ふと、目線を下に下げると固まっている大石の妹の姿がいた。

「ぁ大石・・・いる?」

「・・・・・・」

大石の妹は菊丸をジッと見て動かない。

「英二!悪い・・・って鼻・・・どうしたんだ?」

「えっ、あ、ドアにぶつけた」

「ごめんなさいっ」

言うと同時に大石の妹は菊丸を突飛ばし走り去ってしまった。

「どったの?大石の妹」

「あぁアイツ英二のファンでさ、突然目の前に好きな人がいて固まってたんだよ。恥ずかしくて消えたみたいだけど」

「えぇぇオレのファンって何か変な感じアハハ」

「兄妹で同じ人好きになるなんて困っちゃうな・・・なんちゃって。ハハ」

大石がどさくさに紛れて告白したのも天然姫の菊丸が気付くわけもなく流されてしまった。

「うん。オレも二人の事好きだよんv」

「意味が違うんだけどな」

そんな大石の言葉も菊丸の耳には入っていないようだった。

菊丸は肩にかけているカバンからゴソゴソと何かを取り出すと大石に手渡した。

「はぃこれ。大石がウチに忘れてったDVD

「え?休みなのにワザワザ届けにきてくれたのか」

「うん。せっかく買ったのに忘れてってさぁ早く見たいかなって思って」

ニッコリ笑顔の菊丸に大石はクラクラしていた。休みの日に来るなんてそんなに自分に逢いたかったのかと妄想は爆走している。

「良かったらこれから一緒に見ないか?」

部屋に連れ込んで・・・ィャ連れ込むんじゃない。部屋に招くんだ。そう。そして二人きりになりDVDを観ながらイイ雰囲気になり今日俺達は一つになる。 英二はワザワザ来てくれたんだ両想いじゃないか。また英二の部屋に行く口実の為にわざと忘れてきたのに、英二から逢いにきてくれるなんて。

「さ、入れよ」

「ぁごめん。これから手塚と逢う約束してるんだ。だからついでに寄っただけだから・・・」

大石の甘い想いは一瞬で打ち砕かれた。

「今度貸してよ。じゃ、まったにゃぁ〜v」

菊丸は眩しい笑顔を大石のまぶたに焼き付け走り去って行った。

「ついで・・・・。貸してよ・・・か。クソッどうせ手塚と見るんだろ」

きっとその通りである。

大石はDVDを片手に自分の部屋に戻っていった。

 

 

 

 

菊丸は手塚との待ち合わせ場所に向かっていた。久しぶりのデートにを飛ばし、足どりも弾んでいた。

「・・・少し早く着いちゃうなぁ・・・ま、いっか」

待ち合わせ場所に着くと目の前を大石の妹が歩いている。

「あれぇこんな所まで来てたんだ」

菊丸の声に肩をビクッとさせ振り向きまた固まっている。

「どったの?オレそんなに怖くないよー」

ニッコリ笑う菊丸に耳まで真っ赤にして大石の妹はうつむいてしまった。そこに待ち合わせ時間より少し早く手塚が現れた。

「菊丸すまない。待たせてしまったな」

「まだ時間前じゃん。オレも今来たところだし」

「ん・・・・大石の妹か?」

菊丸の横に石像のように固まっている少女を手塚は直ぐ大石の妹だと気が付いた

「おぉぉすっごい。何で分かったの」

「・・・・大石にそっくりじゃないか」

確かに大石を小さくして女の子っぽくすればこの子になるだろう。

「菊丸・・・・どうしたんだ?鼻赤いぞ・・・おでこもコブができてる」

菊丸のおでこにそっと手を置く。

キュンと赤くなり菊丸は目を伏せた。

「ぅん・・・さっきおもいっきりぶつけちゃった」

「気をつけろ・・・・冷やした方がイイ薬局に行くぞ」

二人のやりとりを見た大石の妹は素直に『お似合いだな』と思っていた。

「ねぇ良かったら一緒に行かない?」

「えぇぇっ!?イイです!遠慮します!邪魔者は消えます」

「邪魔なんかじゃないよぉ。ねぇ手塚」

「あぁ。遠慮なんかしなくていい」

「いえ。何も言わないで飛び出して来ちゃったからお兄ちゃんが心配するんで、帰ります」

そう言うと大石の妹はペコリと頭を下げ走って行ってしまった。

「菊丸・・・・・」

「んにゃ?」

「大石の妹の事」

「んにゃ?」

「――――ぃゃ好きだぞ・・・・英二」

「にゃ?!

手塚は照れくさそうにボソッとつぶやくと菊丸の肩を寄せた。



大石の妹は菊丸と手塚を思い出し胸が苦しくなる反面スッキリした気分でもあった。

家に着くと門の前で大石がオロオロしていた。

「お兄ちゃん何してるの?」

「!?バカッお前がいないら心配してたんじゃないか」

「ごめんなさい」

「・・・・どうかしたのか?」

「え?」

大石の妹は気付かないうちに涙をこぼしていた。

「あ・・・・今ね英二さんと・・・部長さんに会って・・・」

「うん・・・・」

「何か・・・いいなぁって思ったよ。一緒にいたら邪魔かなぁって」

「そうか」

「うん・・・・・お兄ちゃん。私英二さんが好きだったょー」

「うん」

「でもやっぱり今でも好き」

「うん」

「うえぇぇぇん」

大石は妹の頭を撫でながら妹の初恋が失恋したのだと分かった。

勿論自分も大失恋したのだけど。

「今から兄ちゃんとテニスするか?」

「・・・うん」

「公園行こう」

「うんv」




初恋は叶わないって言うけど

本当だね

ねぇ

英二さんの事本当に好きだったよ

 

 

 

 

 

あとがき

Σ(- -) エェ!?大石の妹がメイン?
みたいな感じです。
ネーム描いてた時は妹にもちゃんと名前がありました。
でも名前伏せちゃった(ノ∀`*)
初恋って本当に叶わないんですかねぇぇぇ(-ω-;)

2009年6月12日