「雷」




5月の半ば・・・・・・・

急に雷が鳴り出し大雨になった。女の子達は雷がゴゴゴ・・・・と鳴る度「キャーキャー」と悲鳴をあげていた。

菊丸と不二は休み時間になると廊下の窓から外を見ながら何気ない会話を楽しんでいた。

「あれ?エージ・・・雷怖かった?ビクついてるみたいだけど・・・・」

優しい笑顔で不二は菊丸を見つめる

「うんにゃ・・・女子達の声でビックリしただけ」

ゴロゴロ・・・・ピカーーーーッ

「キャー!!不二くんっ」

雷と同時に女の子の一人が狙ったかのように不二に抱きついてきた。不二の眉がピクリと動いたが不二は優しく声をかけた。

「大丈夫。怖くないから・・・・」

『・・・・て言うか・・・君の方が怖いって・・・・・』内心思いながらも笑顔でいる不二。菊丸はそんな光景を大きな目を更に大きくして見ていた。

「英二?」

「英二何処行くの?休み時間もう終わるよ!!」

不二の声も聞こえない様子で菊丸は廊下を一目散に走り出していた。

「英二・・・・・・・」





菊丸は3年1組のクラスの前に来ていた。ここでも女の子達は雷が鳴る度キャーキャーと騒いでいる。入り口からそっと中を覗き込む。

「てーづーかー」

「・・・・菊丸?」

自分の席で本を読んでいた手塚が菊丸の呼び声に気づき近づいてきた。

「教科書でも忘れたのか?」

「ううん・・・・雷・・・・・がさ・・・・」

「雷・・・・・?」

モジモジと頬を紅く染めながら菊丸はタイミングを待っていた。

ゴロゴロ・・・・・・・

『チャンス!!』心でそう叫び、菊丸は手塚の胸に飛び込んだ。

「菊丸・・・・・雷が怖かったのか?」

「・・・・・ごめんにゃ・・・怒った?」

「いや・・・怖いなら一緒にいてやりたいが・・・授業が始まってしまうからな」

菊丸の頭を優しく撫でながら手塚は微笑んだ。

「今はこれで我慢しろ・・・・授業が終わったらすぐ菊丸の所に行くから」

そう言って自分の学ランを脱ぐと菊丸に着せてやった。手塚の温もりが残る学ランをギュッと抱きしめる。満面の笑みを手塚に見せ菊丸は自分のクラスに戻っていった。

「手塚Thanks♪じゃーまた後でにゃー」

丁度授業開始のベルが鳴り響いていた・・・・・・・・。

菊丸が席に着くと不二が近づいてきた。

「随分ご機嫌だね」

「うん!これ見て。手塚の学ラン。一緒にいれないからって俺に着せてくれたんだ」

「ふーん・・・・・だからご機嫌なんだ・・・・」

「やっぱり手塚は俺の事愛してくれてるんだにゃー」

ニコニコと嬉しそうな菊丸に対して不二の笑顔は消えていた。

「・・・・じゃ英二の学ラン僕に貸してよ」

「にゃんで?」

フッと鼻で笑い不二は笑顔に戻る。

「・・・・別に」

不二は自分の席に着いた

「?変な不二・・・・」

『何て鈍いんだろう・・・・自分がどれだけ愛されてるかなんて全く気づいてないんだろうね英二は・・・・』







いつの間にか雨も上がり雷もおさまっていた─。










塚菊+不二です。
不二。。。。そのうちきっと報われる・・・・・と思う^^;