最近菊丸の行動を見ているとイライラする。

近くに来られるだけで胸がムカムカする。

こんなにも菊丸の事が嫌いだったのかと最近気がついた。

 

 

『扉』

 

「おっはよ〜大石今日も元気ハツラツだにゃ〜」

そう言って菊丸は大石の胸に飛び込んだ・・・・・・・イライラする。

「おっチビ〜今日もちゃんと牛乳飲んだか?」

そう言って越前の後ろから抱きついている・・・・・・・イライラする。

挨拶をしながらの菊丸のスキンシップ・・・・・なのだろう。俺には遠くから手を振り、笑って「おはよう」と言うだけだから何の問題もないが・・・・・・・あんな事毎朝されたらたまらない。

「あ・・・不二〜おはよ〜にゃぁぁ」

「英二おはよう」

不二が不思議でたまらない。菊丸にあんな笑顔でいられるなんて。しかも毎朝頬にキスをしている。見ているだけで吐き気がする。

「手塚おはよう。どうしたの?眉間の皺がいつもより2.3本多い気がするけど・・・・・」

「不二と菊丸を見ていたら具合が悪くなっただけだ」

不二に当るつもりはないが当ってしまう自分が情けなくなってきた。

「へぇ〜手塚が嫉妬ねぇ・・・・・面白いもの見ちゃった クス」

嫉妬?なにを馬鹿な事を・・・誰が嫉妬など!まったく不二の思考回路に潜入してそこを覗いてみたいものだ。

俺は深く溜め息をついて首を数回横に振った。

「集合!レギュラーはBコートで試合形式で練習!2年はCコートでトレーニング5セット。その後はサーブ練習。1年は基礎トレーニング10セットの後球拾い!以上」

不二を見るとなにやら不敵な笑みを浮かべ菊丸の耳元で何かを言っている。菊丸が俺をジーッと見ている。不快だ。

しかも菊丸が近づいてきて俺に抱きついてきた。

「手塚〜練習頑張るにゃぁ」

「菊丸グラウンド50周!朝練で終らなかったら放課後に終らなかった分プラス30周だ!」

「えぇぇぇ ひっで〜!不二の嘘つき手塚喜ばないじゃん!」

「うるさい!さっさと行け」

渋々グラウンドに向かう菊丸に不二は腹を抱えて笑っている。不思議な人種だ。

「あはは・・・・・・ゴメン英二。手塚ってば本当バカだったみたい」

聞き捨てならない事を言っているがもう無視した方が良さそうだ。

「手塚・・・・本当英二の事嫌いみたいだね。いきなり50周だなんて・・・・・・それとも愛情の裏返し?」

「・・・・・・・」

不二はようやく分かってくれたのか、笑いながらBコートに行く。なんだかイライラする。

はぁはぁと息を切らせてどうにか朝練の時間で50周を走り終えた菊丸が今度は桃城の背中にもたれ掛かって、スポーツドリンクを飲ませてもらっている。どこまで子供なんだ・・・・・本当にイライラする。早く朝練が終ればいいと、最近思うことが多くなった。好きなテニスをしているというのに。菊丸のせいで楽しくない。菊丸の存在が苛立ちの原因。

やっと朝練が終っても、休み時間になる度菊丸の声が耳に入ってくる。目に飛び込んでくる
・・・・・・イライラする。

声が耳に入るだけで、別に俺に話かけているわけではない。目に飛び込んできても俺の傍に来るわけではない。だから別に迷惑をかけられているわけではない。

でも・・・・・イライラは日に日に大きくなっていく。

 

 

 

今日は氷帝との練習試合。跡部に無理を言ったつもりだったが、二つ返事でOKをもらった。

「鳳〜久しぶり〜ねねまた背伸びた??」

「菊丸、部長の俺より鳳に先に挨拶するなんてイイ度胸じゃねーかア〜ン」

菊丸の周りに氷帝の奴らが集まりだす。イライラが止まらない。

初めに顧問の榊さんに挨拶をしてから、俺は跡部の所に向かった。跡部は俺の事に気付かず菊丸を笑顔で見ている。なぜこんなヤツに笑顔を見せられるのか・・・不思議だ。

「ね〜鳳ぃ俺の事持ち上げて・・・・子供に高い高いするみたいに」

「菊丸さん・・・それはちょっと無理かも」

「大丈夫やて・・・菊丸めっちゃ軽いで」

「・・・・・忍足さんやった事あるんですか?」

忍足の一言に氷帝メンバーは固まっている様子。そして俺にも気付かないまま。

鳳もフーッと短く呼吸すると菊丸を軽々と持ち上げていた。菊丸も嬉しそうにキャッキャとしているどうしてこんなにも菊丸を皆甘やかすのか・・・・・・

「菊丸いい加減にしろ。練習試合とはいえ試合前だぞ・・・・少しは考えて行動しろ。罰として今日の試合にお前は出さない!」

「えぇぇぇぇ!そんなぁ。俺今日の試合楽しみにしてたのにぃぃ」

「うるさい!さっさと鳳から離れるんだ」

鳳にしっかり抱きしめられた状態で俺に反発してくる菊丸。なんて腹ただしいんだ。

「酷いじゃん!じゃ誰が大石とダブルス組むのさ!手塚なんか大嫌い

ムカ・・・・・

「嫌いで結構。早く戻れ」

鳳にしがみつき今にも泣きそうな菊丸を忍足や宍戸が慰めている。限界だ・・・・

「何そんなに怒ってんだ手塚?そんなに菊丸が皆にかまわれるのが嫌なのかよ小せぇな」

跡部まで・・・・・

「菊丸!戻れと言っている。今すぐ戻らないなら試合の間ずっとグラウンドを走っていろ」

「・・・・・・・・・」

走って青学メンバーの所に戻った菊丸はきっとまたあいつらに慰められるのだろう・・・・そう思うとまたイライラしてきてため息が出た。

「菊丸がすまなかったな・・・・・では試合を始めよう。宜しく頼む跡部」

「はっ・・・やれやれだな手塚。もっと素直になったらどうだ?」

「何の事だ跡部?」

跡部は目を見開いたかと思うと鼻で俺の事を笑い飛ばした。

「俺の眼力・・・・なめてんじゃねーぞ」

「なにを訳の分からない事を・・・・」

本当に訳が分からない・・・・跡部の眼力は本物だと俺は思っている。

・・・・やはりな。菊丸は皆の輪の中。

「菊丸お前はあっちだ」

「手塚のバカやきもちやきんぼ・・・・知ってんだからね手塚が俺の事見てんの・・・・」

はぁ?俺が菊丸を見ている?ヤキモチ?俺が?

「・・・・手塚・・・・本当バカだね。英二おいで。なんでこんなヤツが英二を好きなんだろうね」

そう言って不二は俺の目の前で菊丸を抱きしめ、また頬にキスをした。

ほらまただ・・・・イライラする。

「手塚・・・眉間に皺がこれでもかって位出ているぞ」

「手塚部長・・・・顔怖いッスよ」

「全く自分の気持ちに気付いてないと言った俺のデータに間違いはなかったようだな」

「手塚・・・」

「ふしゅうぅ〜」

「まだまだッスね」

なんだなんだ皆で・・・・・これではまるで俺が菊丸を好きみたいではないか・・・・

「好きなんでしょ英二の事が・・・見ててイライラしてたのは他の皆に英二を触られたくな

 かったから。英二が近くに来てムカムカしてたのは実はドキドキしてたんでしょ」

「俺は・・・・菊丸が好き?だから何時も菊丸の声が聞こえてた?菊丸が目に入ってきた?」

「そう。やっと気付いたの?本当大馬鹿。自分で英二を追っていたんでしょ。自分で英二

 の声に耳を傾けてたんでしょ」

今まで気付きもしなかった。こんなに胸が苦しいのは菊丸の事が嫌いだからとばかり思っていた。改めて菊丸を見つめる。

菊丸の大きな目が俺を見ている・・・・・・直視できない

「・・・・でもね英二は僕のだから手塚には渡さないよ」

「もう〜不二ぃ・・・・」

ははは・・・・自分の気持ちに気付いた途端失恋??なんて事だ・・・・

「手塚その顔は認めたんだね。英二が好きって・・・」

「ああ俺は菊丸が好きだ」

「じゃ英二に謝ってよね。手塚のその馬鹿な嫉妬のせいで英二は嫌な思い沢山してきたんだから」

俺の嫉妬で菊丸に・・・・あぁ俺はなんて不甲斐無いんだ。

「菊丸・・・・」

不二の腕に捕まれている菊丸を引き寄せしっかりと抱きしめる。菊丸は嫌がらずにスッポリと俺の腕に抱かれると他の皆に見せる以上の笑顔を俺に見せてくれた。

「菊丸・・・・好きだ。今まで悪いことをしたな・・・」

「へへ・・・・俺もね手塚が好き・・・ねぇ今日の試合出してくれる?」

「勿論・・・でも他のヤツとのダブルスは許さん。今日のパートナーは俺だ」

周りの皆がどんな顔をしているかは想像がついた。職権乱用でもなんでもいい。もう菊丸を他の誰にも渡さない。テニスでもそうだ。生涯のパートナーも俺以外認めん。

「ちょ・・・・じゃ俺はシングル?それとも試合でれないのか?」

オロオロする大石と不適に笑う不二。他の皆も脱力している。

「・・・・てゆーか部長、菊丸先輩を好きなのは部長だけじゃないッスから」

越前の言葉にハッとして周りを見ると、青学メンバーは勿論。氷帝のやつらまで俺を睨んでいる。

菊丸を腕の中に俺はまだまだこれからも嫉妬をしていかなければならないと覚悟を決めた。

俺は今自分で閉めていた心の扉をそっと開けた気がした。




あとがき
軽子様よりキリバン444のリク頂きまして。
嫉妬にもえる塚という素敵なお題を頂いたのにこんな作品ですいません
嫉妬というかヤキモチというか手塚が恋を知らないというか。。。。。
何だかよく分かりませんよねぇぇ(-ω-;)
こんな物で喜んで頂ければと思います。どうかお納め下さい。
これからもどうか宜しくお願いします。