雨の日のテニスコート

 

雨の日は嫌い・・・・・・・
辛いあの日を思い出すから
雨の日は好き・・・・・
温かい心に触れたから





「あー・・・・雨本降りになってきたぁ・・・・・・・・今日の部活休みにならないかにゃぁ?」
「さぁどうだろうな?」
「もーぅ部長と先生で決めるんだろ!雨だから今日は中止ー!」
「じゃあ英二の為に頑張って交渉してみよう・・・・・・部活がなかったら俺とデートでもするか・・・・・・?」
「・・・・・しにゃい!今日は桃とおチビと三人でペットショップ行く約束してんの!残念でしたー」
「そうか・・・・・それは残念だ」
俺の頭を撫でながら笑顔で言った。
この手は嫌じゃない。むしろ心地良いとさえ感じてしまう。きっと忘れられない温もりに似てるから。
あの日あの時・・・・・たった一度だけの温かい思い出・・・・・・
ま、こんな事口が裂けても言えないけどね〜

言ったらツケアガルし・・・・・・
結局部活は雨で練習できないから各自自主トレって事になった。
口が上手いってスバラシイ特技だよなぁ

雨の中・・・・・・三年前を思い出し、俺はテニスコートに足を運んでいた・・・・・・・


「やっばー・・・・・」
明日提出のプリントを部室のロッカーに忘れた事に気付いた菊丸は職員室に鍵をとりに向かっていた。
「竜崎せんせー!部室に忘れ物したにゃー鍵貸してくんろー」
「鍵はまだ戻ってないぞ・・・・・・まだ部室に誰かいるんじゃないのかい?」
「ほーぃ・・・・・・誰がいるのかにゃぁ?大石かにゃ?そしたら一緒帰ろーっと」
を飛ばしながら菊丸は駆け足で部室に向かった
部室のドアを静かに開けた菊丸の目に珍しいモノが飛び込んで来た
「て・・・・・手塚」
部誌を書いている途中で眠ってしまっている手塚の姿。
「手塚?こんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ」
ロッカーからレギュラージャージを取り出し手塚にかけてやり、起こそうと肩を揺すり
耳元で何度か手塚の名前を呼ぶと手塚は虚ろだが目を覚ました

「ん・・・・ぁぁ側に・・・・・てくれ・・・・だな・・・・じ・・・・・」
「手・・・・・・塚?」
ゆっくりと起き上がった手塚は菊丸の顔を包み込むと優しく深くキスをした。
突然の事に菊丸は声も出せないまま部室を飛び出してしまった。

手塚にキスされちゃった・・・・・どうしよう・・・・・
そっと手塚が触れた場所に指を置いた
込み上げてくる熱い感情に身体が震えた。  手塚は俺の事そんな風に見てくれてたんだ・・・・・嬉しい・・・・

嬉しかった。菊丸も手塚の事が好きだったから・・・・・
ずっと片思いだと思っていた手塚からの思いがけない口付け。
「手塚・・・・・俺の事゛菊丸゛じゃなく゛英二゛って言ってくれたんだよな・・・・・」
「英二!ボーッとしてると危ないぞ」
その声で我に帰った菊丸の目の前には眉をしかめた乾が立っていた

「乾・・・・・」
「顔が赤いな・・・・熱でもあるんじゃないのか?」
言いながら菊丸のおでこにそっと手を置いた

「・・・・熱は無いみたいだが・・・・・俺の作った栄養ドリンクを飲んでおくか?」
「大っ丈夫!乾汁なんか飲みたくなーい!・・・・・って・・・・あぁぁ!プリント忘れてきたぁ」
せっかくプリントを取りに来たのにその肝心の物を忘れてしまい菊丸は肩を落とした。
「菊丸・・・・プリントだったら俺のをコピーしたらどうだ?物理のプリントだろう?」
「うんうん物理の!明日提出なんだよね。助かったぁ」
「・・・・・・プリントだけコピーしても書く所を書かなければダメなんじゃないのか?」
乾のその言葉に息を詰まらせる菊丸。少しだけ俯き上目使いに乾を見た。
「仕方のない奴だな・・・・家に寄っていくか?」

「うん!寄ってく!寄ってく!」
コロコロと笑顔をこぼし、菊丸は跳ねるように乾の後を付いていった。




「手塚?こんなトコで寝てたら風邪ひくよ」

肩を揺らし半ば強引に手塚の体を起き上がらせた。
「不二・・・・・・」
「まったく・・・・・いつまで待っても来ないから見に来てみればコレなんだから・・・・・・」
「ずっと側にいてくれてたんじゃなかったのか?」
「悪いけど僕はそんなに健気じゃないよ。さ、早く帰ろう」
不二はそう言うと足早に部室を出て行ってしまった。
肩にかけられたレギュラージャージを手に取りカバンに詰め込んだ

「・・・・・誰かがかけてくれたのか・・・・・てっきり不二だと思っていたのに・・・・・」
そして微かに残る唇の感触に手塚は温かいものを感じていた。



乾の部屋でプリントと睨めっこをしている菊丸の姿を見て乾はやれやれ
・・・・・という感じに小さく溜息ついた。

「菊丸・・・・・・プリントを見ていても答えは浮かび上がってこないぞ」
「んなの分かってるよ!でもさー分かんないし・・・・・・あ!乾見てたら答え出てくるかもー」
ニッコリと笑いながら乾を見つめた。
一瞬クラッとくるような眩しい菊丸の笑顔・・・・・・乾は目線を下に向けほんの少し顔を赤らめた
「馬鹿な事言ってないで・・・・・どこが分からないんだ?」
「ココとココ」
乾にほとんど教えてもらいようやくプリントを終わらせると、菊丸はゴロンと床に仰向けに寝そべった。
「ねー乾ぃ〜ちゅーしたことある?」
「唐突になんだ?」
「やっぱり好きな人にしかしないよね・・・・・・」
「それは俺を誘っていると解釈していいのか?」
「にゃ?!ちがうよ!乾となんてちゅーしたくにゃい!」
「失礼な奴だな」
不適な笑いを浮かべ、床に寝そべっている菊丸に覆いかぶさると押さえ込むように唇を重ねた。
抵抗しようと手足をバタバタさせるが乾の力には敵わず、自分の非力さに思わず涙が出そうになった。
「何をそんなに目を潤ませてるんだ?菊丸がキスをしたことあるか?
 と聞いたからしてみようと思ってな
・・・・・・
「俺はー!!好きな人としたいの!」
「俺もだ・・・・・だからキスした」
乾の突然の告白に頭が真っ白になった。
しばらく思考回路がショートして何も考えられなかったが、なんとか言葉を出す事ができた
「俺・・・・・乾の事好きだよ・・・・・・でもちゅーしたい好きじゃないよ・・・・・・ゴメン」
「・・・・・・そうかそれは残念だ・・・・・・でもきっと英二は俺の事好きになると思うぞ」
「何それ・・・・・?俺のデータを集めてみた結果?」
「まぁそんなトコロだ・・・・・・」
「俺、乾の事好きにならないよ!てか、いい加減退けてよ!重い」
「すまない」
乾が上から退けるなや否や菊丸は立ち上がりカバンを持つと一言プリントの件のお礼を言い
逃げるように部屋を後にした。

「・・・・・ちょっと急ぎすぎたかな」
ズレたメガネを直し窓ごしに走り去っていく菊丸の後ろ姿を見つめていた。


何だよ!乾の奴・・・・・無理矢理ちゅーするなんてさ!俺の好きなのは手塚にゃの!

乾なんか絶対好きにならないんだから!!
零れる涙を制服の袖で拭いながら走り続けた。



「おはようございます」
「あら・・・・・今日は何時もより早起きなのね・・・あ、
 昨日のジャージお洗濯済んでそこにたたんでおきましたからね」

「有り難うございます」
母親に礼を言ってからジャージを持つと部屋に戻りそれを広げた。
「菊丸・・・・・菊丸だったのかコレをかけてくれたのは」
ジャージをたたみ直しカバンに入れると手塚は家を出た。



何時もより早く来た為かまだ部室には誰もいなく、鍵もかかっていた。
間もなく大石が鍵を持って走って来るのが見えた。
「手塚・・・・今日は早いな」
「あぁ早く目覚めてしまってな・・・・・・・大石はいつもこの時間か?」
「今日は少し遅い方かな」
部室に入り着替えをしていると乾、海堂、河村とレギュラー陣が次々と入って来た。
「手塚行かないのか?」
着替え終わった大石が不思議そうに声をかけてきた。
「あぁちょっとな・・・・・」
「そうか・・・・・じゃぁ先に行ってるぞ」
カバンの中のレギュラージャージに手をかけるがしまい直し自分もコートに出ようとしたその時
不二と菊丸が部室に入って来た
「おはよう手塚」
「おっはよー手塚今日も気持ちイイ朝だね」
「おはよう・・・・・あ、菊丸ちょっといいか?」
「ん?にゃに?」 
「昨日・・・・・かけてくれたジャージ・・・・・・すまなかったな」
「あ・・・・・ううん・・・・わざわざ洗ってきてくれたんだ・・・・ありがとにゃ」
頬を朱く染め菊丸は恥ずかしそうに手塚からジャージを受け取った。
手塚も菊丸のその顔を見て何か今までにない感情に胸が高鳴った。
「なんだ・・・・手塚・・・・僕と英二間違えたの?最低ー」
「え?不二・・・・・と俺間違えたってどういう事?」
「不二!」
「さ、英二早く着替えて練習行こう」
はぐらかすように不二は何時も以上の笑顔を菊丸に向けた。
「待ってよ・・・・・はぐらかすなよ!」
「英二!僕と手塚は付き合ってるんだよ。昨日何があったか知らないけど
 あの時手塚は僕が側にいたと思ってたんだ」
「・・・・・本当?手塚・・・・・」
「すまない菊丸・・・・・でも!」
「不二と間違えて俺に・・・・・・・」
菊丸は大きな瞳に涙を浮かべ声にならないような小さな声で呟き俯いた。
「手塚も俺の事好きだと思ったのに・・・・・だからキスしてくれたって思ったのに・・・・・」
「菊丸!聞いてくれ・・・・」
「にゃーんだ!俺勘違いしちゃった。手塚が突然ちゅーなんかするからさぁ・・・・・そっかぁ
  寝ぼけて不二と間違えだだぁ手塚ってバッカだぁ・・・・・あはは」
顔を上げた菊丸は何時もと変わらない笑顔で手塚をバシバシ叩きながら
「俺の事好きになっちゃったかと思って夕べどう断ろうか真剣に考えちゃったじゃん!
  じゃ、俺眠いから朝練サボるねー」
「菊丸!」
笑い飛ばしながら菊丸は部室を出て行ってしまった。後を追おうと手塚もドアに手をかけたが
不二に止められた。

「・・・・・行かないでよ。僕だって手塚が好きなんだ・・・・・」
「不二・・・・・すまない俺は・・・・・・」
「言わないで!聞きたくないよそんな事・・・・・手塚も英二と一緒で勘違いしてるだけなんだ
  ・・・・僕は別れたりしないからね。だから行かせない」
不二に腕をしがみつくように捕まれ、今までそんな弱さを見せなかった不二に
手塚は菊丸の事を追えずに
不二を抱きしめた。
気付くと外は大雨になっていてコートから部員達が戻って来た。
「手塚・・・・・雨のため朝練は中止だ!」
「そうか・・・・」
「手塚・・・・・英二は一緒じゃなかったのか?」
「・・・・・さっき朝練をサボると出ていってしまった」
「そうか・・・・」
乾は持っていたノートをカバンにしまうと着替えもせず部室から出て行った。




「菊丸・・・・・そんなトコロにいたら風邪をひくぞ」
「いーの!今はココにいたいの!」
「ずぶ濡れになって・・・・・」
カバンからタオルを出すと傘の中に菊丸を入れ頭を拭いてやった。

「泣いているのを見られたくなかったか?」
「何で泣いてるって分かるんだよ!」
「英二の事はなんでも解るよ」
「・・・・・じゃあほっといてよ」
「ほっておけないからこんな雨の中ここまで来たんだろう。」
菊丸はただ黙って乾の胸に抱かれて泣いていた。
「・・・・・手塚を諦めるのか?」
「知ってたの?」
「だから英二の事はなんでも解ってるって言ったろ」
「だって不二と付き合ってるって俺親友の恋人取るとか嫌だもん」
「そうか・・・・・優しいな英二は・・・・・」


そうして手塚は中学を卒業と同時に留学した。不二も高等部に進学はしたものの
半年とたたずに手塚を追うように留学をしてしまった





「菊丸・・・・・そんなトコロにいたら風邪をひいてしまうぞ」
「え?」
振り向くとそこには手塚が立っていた。
「手塚・・・・・帰ってきたの?」
「あぁ・・・・・三年間・・・・ずっと考えてた」
「・・・・な、何を?」
「菊丸・・・・お前の事だ」
「何で?俺なんて関係ないじゃん。それより不二とはうまくいってるの?」
手塚は菊丸に近づくと強く抱きしめた。
「にゃ・・・・にゃにすんの?また寝ぼけてる?もしかして時差ボケ?」
手塚から離れようと必死にもがいてみるが、強く抱きしめられ離れる事ができなかった。
「寝ぼけてもいない!時差ボケでもない!俺は菊丸が好きなんだ!三年前のあの日から」
菊丸は手塚のその言葉に息をのむのと同時に大粒の涙を零した。
「手塚・・・・・どうして・・・・?不二は?」
「不二とはもう終わっている・・・・ダメだったんだ俺が・・・俺は菊丸でなければダメだった・・・・
  不二も分かってくれた」
手塚が言い終わると同時に菊丸の携帯が鳴った。
「メール?不二から・・・・・・」

英二・・・・・ゴメンね。手塚を返すね・・・・・三年前から二人は両想いだったよ

「不二・・・・」



「乾ゴメンネ・・・・もう少しで英二と両想いになれたのに」
「・・・・理屈じゃない・・・って事か・・・・菊丸は俺の事好きになっていると思ったのにな」
「好きになってたと思うよ。でもやっぱり手塚じゃなきゃダメなんだよ。
 手塚が英二じゃなきゃダメなようにね」

コートの影で乾と不二が短い会話を終わらせた。

「手塚・・・・・俺・・・俺ね・・・・ずっと手塚が好きだったよ・・・・・」
「俺もだ・・・・・好きだぞ菊丸・・・・・」

雨の日は嫌い・・・・・・・
辛いあの日を思い出すから
雨の日は好き・・・・・
温かい心に触れたから
雨の日が好き・・・・・・
大好きなあの人が傍にいてくれるから

 

 あとがき
終わってみれば塚菊・・・・・
本当は乾×菊丸だったのに。
途中から菊丸と手塚が暴走してこんな結末に(-ω-;)
私ってば根っからの塚菊っこなのねぇぇぇ((´∀`*))ヶラヶラ ←開き直り
もっと不二と乾の気持ちを書きたかったのですが、あえて書きませんでした。
すみません(汗
2006.6.15 彼方